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逢瀬日記

ご主人様との出会いから今迄。 後天性被虐趣味なわたしの手記。

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ひとまわり小さい靴

彼女とはじめて会ってから、
この日を、転機を、待っていたように思う。

思春期を過ぎた頃から、
隷属する女のエロティシズムに傾倒していた僕は、
彼女を見た瞬間ある種特別な願望を持つに至った。

彼女とは、
会社の同僚の代わりに間に合わせで出たコンパで出会った。
彼女自身もまた、ここに居ない誰かの代わりとして来ていた。
外見はとびぬけて優れているというわけではないが、
並み以上の可愛らしさがあり、
何人かと一緒にいる中では目を惹くものがあった。
その年ごろにしては、
古風な感じがして、いい意味で流されていない、
いまどき珍しい女性だった。
言葉を選ぶ聡明さが気に入った。
物腰や所作は控え目な印象にも関わらず、
少し気の強そうな意思のある目が印象的だった。
それが、意にそぐわない処遇を強制され、
それに怯え、また強く否定し、
いつしか受け入れ、
従順な目に変わる過程を
思慕するほどに、
体躯に熱が籠もっていくのが判った。
ふつうを装っているその総てを剥いで引き裂いてやりたいと望んだ。
彼女の総てを支配、管理し、瑣末な変化さえ見逃さず、
詳細に記録したいと望んだ。

彼女が求めているような類の言葉で口説いてから、
何度かのやり取りの、
すぐにふたりで会うに至り、
頻繁に僕の部屋に遊びに来るようになった。
未婚の女が男の部屋に来るなど、
襲ってくれと云っているとしか思えない軽率な行動だが、
僕は敢えて、そうしなかった。
理性の赦す範囲で、触れあうにとどめた。
性的魅力に欠けているわけではない。
むしろ、誘惑に対する根気強い忍耐力を要求された。
熟れるまで待つ方が果実は美味になる。
その想いで。

言葉を交わすだけ。
その雰囲気になりそうな程度に、心と体の距離を近付けるだけ。
慎重に選ぶ言葉や行動。
彼女の生きてきたなかには決して存在しなかった
その刺激は、じわりじわりと、
僕の意図を果たすための土台を形成していった。
その時間を彼女が心から楽しんでいることは瞭然だった。

僕に対する関心や性的興味
僕という異性に対する好意が存在するのは明らかだった。
そして、僕のほうからのはたらきかけによって、
想いが成就するのを望んでいたのだろう。
安易だ。
彼女が与えて欲しいと思うものを
与えてやることは可能だ。
その先に僕が満たされることなどなにもないと
判り切っていたので、そうしないだけだった。
彼女の、“僕の表面”に対する片思いを微笑ましく見つめていた。

僕の方はというと、
服で覆っても、彼女の身体から発する噎せ返るような
雌の匂いに当てられながらも、
その事実は何もないけれど、
自分の女になることには確信を持っていた。
いかに、彼女の期待を裏切って、
関係を僕の望む形にしていくか、
その過程をシュミレーションすることが
専ら熱中していた遊びだった。
期が熟すまでは
彼女の片思いごっこに付き合うつもりでいた。
それが必要な準備であるなら。


まだ、僕が夢想するような、
特別な遊びは何も始めていない。
ただ、時折試すように、
意味ありげな言葉や視線を遣った時、
彼女のなかで今までと違う時間が流れ出す音が
聴こえるような気がする。
もしくは、香り、か。
ふっと漂い始める、
まったく新しい空気。
それを拒む気配は、今のところ、感じ得ない。


僕は今日を一緒に迎える記念にと、
部屋に来た彼女に
丁寧に包装された白い箱を手渡した。

選んだ贈りものは、
彼女の肌によく映える、
深いボルドーから、薄い紅へのグラデーションが美しい、
華奢な造りの靴。

「ありがとうございます。」
その儚げに震える声で、彼女が本当にうれしく思っていることが
伝わってきた。
彼女は、僕の部屋でその靴を試着しようとして、
難渋していた。
それもその筈だ。
彼女のサイズよりも一回り小さめのものを用意したのだった。
これでは歩けないと訴える彼女に、
歩けないなら、歩かなくていい。
飾っていてもいいと伝えた。

かろうじて履ける、
小さすぎる靴は、
在る意味、抽象的な贈りものでもあった。

勿論、造形の愛らしさやセクシーさ、
彼女の雰囲気を重視してセレクトしたものだ。
そこに持たせた意味・・
その靴は僕の価値観だ。
当て嵌めるには、多少の苦痛もあるだろう。
その苦痛を乗り越えて、履きたいと思うか。
履くという行動を選ぶか。
歩けない靴を愛するのかどうか。
彼女の反応が、関係の転機になるだろうと思った。
今まで彼女に対して重ねてきた言動、その反応から、
サイズの間違いを
僕の“ちょっとしたミス”だと思うには違和感が生じてしまうだろう。
さて、どんな反応を見せてくれるか。

僕は彼女から目を逸らさずに云った。
「これは、君だけの、君の為の靴だ。
そのサイズ、造形、どれも君のためのものだ。
もし、違ったサイズや、
違った造形なら、贈る意味自体がなくなってしまう。
この靴が君を求めたから、
君に手渡しただけだ。
とても似合うと思う。
手元に置いておくだけでもね。」




どこへも行けない靴を、愛おしそうに履き、
うれしそうに撫でる女の姿を
見るのは、もう少し先の話・・














どうぞ素敵なクリスマスを。
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