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逢瀬日記

ご主人様との出会いから今迄。 後天性被虐趣味なわたしの手記。

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幽閉のシンデレラ

膝のうえには、真っ白い箱。
美しい造形の箱を四方に走る、
上質なことが、すぐに判る、
深い黒色に染められたサテン地のリボンを丁寧に引く手は、
緊張していました。

貴方が、私へなにかを贈るなんて、
そうそうないこと。
私はその奇跡に近い出来事に、
驚いてはいるものの、
その興奮に、硬直して、
素直に喜べないほどでした。
くちもとの綻びも、
どこか、ぎこちなかったかもしれません。

貴方の部屋の純白のソファに、
貴方は腰掛けたまま、
貴方の足元のラグにぺたんと座っていた私に、
「今日の記念に」と、
その箱を差し出したのです。

リボンを解いて、開いた箱から出てきたのは、
ひと揃いの華奢な造りの美しい靴でした。

日に灼けていない白い肌によく馴染む、
柘榴のような、
赤ワインのような、
深い赤色で染められている皮革は、
ソール部分から履き口にかけて、
巧みにグラデーションがかかっていました。
受けた光りを鈍く反射して、艶々と佇んで居ました。
装飾は殆どない、
たいへんシンプルな造りでしたが、
ワイングラスのステムのように細いヒール、
完璧と言わざるを得ない、
爪先へかけての曲線を描く
ポインテッドトウは、
女に穿かせるものとして、
それ以上の造形などありはしないのではないか、
と思わせるようなものでした。

「ありがとうございます。」
心の動きについていけない言葉が、
ほろりと零れたように漂いました。

幾度か、いろいろな贈物を受けたことはありますが、
これほどまで、意表をついて・・
欲していることを、そうと知らなかったものを
贈られたことは無いように思いました。
完璧な靴でした。
その靴は私の所有を求めており、
私の脚を求めており、
私はそれを心から望んでおりました。

「履いてもいいですか」
おそるおそる尋ねます。

「もちろん。君のための靴だ。」
貴方はそう促します。

ラグに立って、
そっと爪先を滑り込ませました。

思いのほか、抵抗があって、なかなかスムーズには入りません。
やっとのことで、踵を納めると、
靴の中は私の実質で満ち満ちてしまい、
拇指の関節の辺りや、
小指の付け根の辺り、
すこし長い示指の爪が、
きゅうきゅうと痛みました。

「少し、きついみたいです。」
「そうだね。」
「痛いです。」
「そうか。」
「これでは、履くだけで精一杯で、
歩くことはとても叶いません」
視線を落とす睫毛の影が私の頬に映りました。

貴方は少し笑っておっしゃいました。
「歩かなくても、構わないよ。
履くことが苦痛なら、鑑賞用にしてもいい。」
「それでは、せっかく下さったのに、
申し訳ありませんわ。」

貴方は私をじつと見つめて、おっしゃいました。
「これは、君だけの、君の為の靴だ。
そのサイズ、造形、どれも君のためのものだ。
もし、違ったサイズや、
違った造形なら、贈る意味自体がなくなってしまう。
この靴が君を求めたから、
君に手渡しただけだ。
とても似合うと思う。
手元に置いておくだけでもね。」

その意味をひとつひとつ慎重に受け止めます。
わたしだけのもの、
貴方が選んだもの、
貴方のもの、
私のもの、

私はまっすぐに貴方を見つめました。
「判りました。
お外では、これを履いて歩くことは叶いませんが、
このお部屋でなら、履いても宜しいですか?」
履くだけなら、
窮屈なだけで、
耐えることができると思ったからでした。
「構わないよ。」
貴方は私の目に頷いたように、そうおっしゃいました。

こうして、
私にとって特別なこの靴は、
貴方の部屋でのみ、
履くこととなりました。

どこへも行けない靴・・・。

その小さすぎる靴は、
私を貴方のもとへ幽閉するかのようでした。

華奢で美しい足枷は、
何より貴方の支配を悦びました。

さて、
貴方は、私のシューズのサイズをご存じだったのでしょうか。
私は、ご存知だったのではないかと思えてならないのです。
記憶力がおそろしく優れている貴方のこと。
履いて歩くことが儘ならない靴を贈るなどということは生じえないと思うのです。
敢えて、
どこへも行けない靴を贈る意図・・・

それに想いをはせるたびに、
私は恍惚に浸ってしまい、
ますますその靴の呪縛を、
甘やかな、心地の良いものと感じ、
この靴を脱ぐ心地がしないのです。

今日も貴方の部屋で、
貴方が下さった美しい靴を愛おしく撫でます。
貴方も私の想像と同じ気持ちでいるなら・・・












どうぞ素敵なクリスマスを。
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