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逢瀬日記

ご主人様との出会いから今迄。 後天性被虐趣味なわたしの手記。

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柚子香

「今日は冬至だから。柚子湯にしてみたよ。」
貴方は、私を従えた浴室で、手元から取り出した柚子を、
ひとつ、ふたつ、湯船に浮かべました。
冴えた芳香が浴室に漂います。
意外と行事を大切にする方なのですね。
冬至、という古めかしく感じる言葉の響きさえも
うれしく思いました。

身体を洗い終えて、浴槽に横たえた私を
後ろから包むようにして、また、
貴方も湯船に浸ります。
温度の上昇で白く靄がかかっていく浴室を、
夢の出来事のように見つめます。
重力が和らいでゆるやかに貴方の身体にそって
たゆたう私の身体を、
不意に貴方の腕が
固く抱きしめます。
言葉を失ったまま、
身をすぼめるように貴方のされるままに、
水面がゆらゆら揺れているのを
息をころして見つめています。

片腕がしっかりと私を掴んだまま、
もう片方の長い腕が、
浮いている柚子をひとつ、掴みます。
その柚子を、私の頬にゆっくりと擦りつけます。
間近で香る、甘く酸い香りが鼻を衝きます。
耳の後ろ、髪にまで、
塗布するように、
ゆっくり、
柚子の果皮で、
愛撫を続けます。

私の身体はすっかり、貴方の柚子の香りしかしないように
なっていました。
貴方は、手に取った柚子を私に見せながら言いました。
「冬至は、年で最も夜が長いから、
闇の・・魔の時間にわるいものが悪さをしないように
太陽の力の代わりに柚子を浮かべるんだ」
「太陽の、かわり」
「私たちは、その魔の時間を愛しているのだけれどね」

貴方は、私に見せるように
ゆっくりと柚子を握りつぶしました。
幾筋も、あふれる果汁が滴って、
湯船に沈んでゆきました。
シトラスの芳香が更に強さを増しました。
果皮は痛々しいほどに裂け、
指の隙間からは、
いたたまれないほど変形した
果実が姿を見せて居ました。
私はじっと貴方の手、貴方の指先を見つめていました。
その手にそうして欲しいといつの間にか願っていました。
歪んだ柚子は私そのものでした。
裂け、溢れ、もとの形に戻れないほど・・・、
流れ出す果汁は、私の歓喜に震える体液でした。
私はこれから貴方に握りつぶされる柚子そのものでした。
その変容に恐怖を感じながらも、
どこか甘い期待を持っていました。
私は貴方の後について、年中でいちばん長い夜へと向かいます。
浴槽ではいつまでも
甘く酸い、芳しい香りが漂っていました。









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